推定相続人の死亡と遺言の効力
推定相続人の死亡と遺言の効力
1 はじめに
相続させる旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が、遺言者より先に死亡した場合、遺言の効力はどのようになるのでしょうか。
2 事例
次のような事例を仮定して説明します。
Aさんが、長男であるBさんに全部の遺産を相続させる旨の公正証書遺言を残した後、Bさんが、Aさんより先に死亡し、その後にAさんが死亡しました。
Aさんの法定相続人は、Bさんの子であるCさん、Aさんの二男であるDさんです。
3 裁判例
最高裁判所の裁判例には、「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」旨判示したものがあります。
4 予備的遺言
したがって、2の事例において、Aさんの遺言は、最高裁判所の裁判例によれば、特段の事情のない限り、効力を生じないと考えられます。
Aさんとしては、Bさんが先に死亡した場合には、Cさんにすべての遺産を相続させたいと考えていたのであれば、BさんがAさんより先に又は同時に死亡したときには、Cさんにすべての遺産を相続させる旨の予備的遺言をする必要があったと考えられます。
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