相続放棄と遺産分割

相続放棄と遺産分割

ある相続人の方が、相続放棄をすることと、当該相続人の方が遺産を全く取得しない旨の遺産分割の合意をすることは同じ意味でしょうか。

確かに、相続放棄をした場合であっても、遺産を全く取得しない旨の遺産分割の合意をした場合でも、いずれも、当該相続人の方は、相続財産を取得できないという点では同じです。しかし、両者は、法的な意味が異なりますので、例えば、次のような違いがあります。

   

まず、債務を負っている相続人の方が、相続放棄をした場合、当該相続人の債権者は、相続放棄について、債権者取消権を行使できないと考えられています。一方、債務を負っている相続人の方が、当該相続人の方が遺産を全く取得しない旨の遺産分割の 合意をした場合、債権者は、債権者取消権を行使できると考えられます。

 

次に、相続人の方が、相続放棄をした場合、相続放棄をする際、まったく知らなかった債務の 存在が後に判明した場合、相続放棄した相続人は、はじめから相続人でなかったものと見なされますので、原則として、この債務を承継しません。一方、相続人 の方が、財産を全く取得しない旨の遺産分割の合意をした場合、被相続人の債権者は、当該相続人の方に対し、原則として、法定相続分の範囲で請求できると考えられます。

このように両者には違いがありますので、相続人の方が、遺産の取得を希望しない場合であっても、どのような手続きをするか、よく検討する必要があります。