相続債務がある場合に、遺留分は、どのように計算しますか?

事務員:遺留分侵害額を計算するにあたり、相続債務は、どのように影響しますか?

 

弁護士:相続人のうち、1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がある場合について、説明します。

 

弁護士:このようなケースについて、最高裁判所の裁判例があります。

 

事務員:はい。

 

弁護士:最高裁判所は、「相続人のうちの一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合、遺留分の侵害額の算定においては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ、これに応じた場合も、履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず、相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。」旨判示しています。

 

事務員:そうすると、相続人の一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解釈される場合には、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額は遺留分の額に加算されないのですね。

 

弁護士:そうですね。

 

事務員:改正相続法では、どのようになっていますか。

 

弁護士:民法1046条2項3号の規定は、遺留分侵害額を算定するにあたり、「被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務」を加算する旨規定しています。

 

事務員: この規定によると、相続人の一人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がなされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解釈される場合には、どうなりますか。

 

弁護士:この場合には、遺留分権利者の遺留分侵害額を計算するにあたっては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務は加算しないと考えられます。

 

事務員:なるほど。

    遺留分については、いろいろ難解な規定があるのですね。