【コラム】遺産分割の対象となる財産、不動産

遺産分割の対象となる財産、不動産

遺産分割の協議、調停、審判において、遺産である不動産について、様々な法律問題が生じる場合があります。
このコラムでは、私の個人的な経験から、不動産について、問題となることがある主な点について、説明します。
 

①不動産の評価

例えば、銀行預金については、残高証明によって、その金額を評価することが比較的容易であると思います。
一方、不動産については、時価を評価することは容易ではありません。
例えば、法定相続人全員で不動産の評価額を合意できれば良いですが、法定相続人間で不動産の評価について合意に達しない場合には、不動産を鑑定することになる場合もあります。
 

②不動産の分割方法

遺産分割の方法としては、現物分割、代償分割、換価分割などの方法があります。もっとも、不動産を現物分割することは容易ではありません。また、例えば、不動産を法定相続人全員が法定相続分に相当する割合の共有持分で共有取得することが、遺産分割に関する紛争の解決につながらない場合もあると思います。
遺産分割の対象となる財産に不動産が含まれる場合には、個別具体的な事案に応じて、分割方法を慎重に検討する必要があると思います。
 

③特別受益と持戻し免除の意思表示

民法903条1項は、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは」特別受益が問題となりうる旨規定しています。
例えば、法定相続人の一人が被相続人の所有する不動産を無償で使用している場合には、他の共同相続人から、特別受益に該当する旨の主張がされる場合もあります。
一方、特別受益の主張を受けた側としては、特別受益に該当する旨の主張自体を争う場合もありますし、持戻し免除の意思表示を主張する場合もあると思います。
 

④被相続人死亡後の賃料

最高裁判所の裁判例では、相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である旨判示したものがあります。
遺産のなかに賃貸不動産がある場合には、その賃料について、検討する必要があると思います。
 
このように、遺産分割の対象となる財産に不動産が含まれている場合には、様々な問題が生じる場合もあります。
詳しくは、弁護士にご相談ください。