成年後見制度が改正。変わった点や改正された背景を弁護士が解説

1 成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が十分でない方について、預貯金や不動産の管理、遺産分割協議などの相続手続などの財産管理、介護、福祉サービスの利用契約や施設入所の契約などの法律行為を支援する仕組みです。本人の代わりに契約を結んだり、本人にとって不利益な契約を取り消すことで、財産や生活を守ることを目的としています。
平成12年の制度開始から20年以上にわたり運用されてきましたが、このたび大きな見直しが行われることとなりました。

2 2026年6月の法改正で何が変わるか

2026年6月、成年後見制度の見直しを盛り込んだ改正民法が可決、成立し、公布されました。改正民法は、令和8年9月時点では、施行されておらず、遅くとも、令和10年12月24日までには施行される見込みです。

簡潔に言うと、成年後見制度は、一度始めたら、ご本人が亡くなるまでやめることができない硬直的な制度から、必要なときに、必要な範囲、期間だけ利用できる、支援内容を家庭裁判所が個別の事情を考慮して決めることができる、支援者や支援内容を変更しやすくなる柔軟な制度に転換をします。

3 現在の成年後見制度とは?

現在の成年後見制度では、ご本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型を設けています。後見の場合には、成年後見人、保佐の場合には、保佐人、補助の場合には、補助人がそれぞれ選任され、成年後見人、保佐人、補助人に与えられる権限の範囲を段階的に変えています。判断能力を常に欠く状態にある方には、成年後見人が選任され、成年後見人には、財産管理全般の代理権と、日常の買い物などを除く法律行為の取消権が包括的に与えられています。判断能力が著しく不十分な方には、保佐人、判断能力が不十分な方には、補助人が選任され、それぞれ権限の範囲が異なります。
また、判断能力があるうちに将来に備えて支援者をあらかじめ決めておく、任意後見という制度もあります。

4 現行の成年後見制度が改正された背景

高齢化が進み、単身の高齢者が増加することなどの社会的背景を受け、成年後見制度に対するニーズの増加やニーズの多様化が見込まれています。そこで、成年後見制度を利用しやすくする必要が指摘されてきました。
一方、現行の成年後見制度については、いくつかの課題が指摘されてきました。
成年後見制度は、一度、成年後見を開始すると、本人の判断能力が回復しない限り、本人が亡くなるまで終了することができない制度であることです。例えば、本人が相続人の一人となっている遺産分割をするために後見人を選任したのに、遺産分割が成立した後も、本人の判断能力が回復しない限り、成年後見が終了しないこととなります。専門職の成年後見人が選任されている場合、遺産分割が終了した後も、本人の財産から、成年後見人の報酬を支払い続けなければなりません。
成年後見人には、包括的な代理権、取消権があり、本人の自己決定権が必要以上に制限される場合があります。本人が自分で決めたいことがあっても、成年後見人が選任されていると、できないことがあります。
本人の状況の変化に応じた成年後見人等の交代が実現せず、本人がそのニーズにあった保護を受けることができない場合があります。
このような課題の存在から、成年後見制度の利用をためらうケースもあり、法制審議会での審議を経て、成年後見制度を利用する本人の尊厳にふさわしい生活の継続やその権利利益の擁護等をより一層図る視点から、成年後見制度の抜本的な見直しが行われることとなりました。

5 2026年成年後見制度改正のポイント

(1)事実上の終身制を見直し、必要な期間だけ利用できる制度へ

現在の成年後見制度では、一度、成年後見が開始すると、本人の判断能力が回復しない限り、本人が亡くなるまで継続します。
成年後見制度が改正された後は、支援の目的を達成したり、制度の利用が不要になった場合には、家庭裁判所の判断により終了することができる制度に変わります。
例えば、本人が相続人の一人となっている遺産分割が終了するまで、本人が所有者となっている不動産を売却するまでといった利用がしやすくなります。

(2)「後見、保佐、補助」を「補助」に一本化へ

現行の成年後見制度では、「後見」「保佐」「補助」の3類型がありました。成年後見人、保佐人、補助人は、民法において、それぞれ、その権限が規定されていました。この3類型が補助という制度に一本化されることとなりました。
新しい制度では、本人の判断能力や支援の必要性に応じて、家庭裁判所が、どのような支援が必要かを個別に決定することになります。

(3)支援者や支援内容の見直しがしやすくなります

現行の成年後見制度では、成年後見人(保佐人、補助人)が選任されると、途中で変更することは容易ではありませんでした。
成年後見制度の改正後は、家庭裁判所が、本人の状況を確認しながら、支援者や支援内容を見直ししやすい制度になります。

6 成年後見制度の改正に関するよくあるご質問

(1)Q 新制度は、いつから使えますか。

A 施行日は、今後、政令で定められます。公布から2年6か月以内、遅くとも令和10年12月24日までに施行される見込みです。

(2)Q 今既に後見制度を利用している場合は、どうなりますか。

A 施行に関しては、経過措置が設けられます。現在、成年後見人、保佐人、補助人が選任されていて、継続したい場合、利用をやめたい場合など、いろいろなケースを想定して経過措置が定められています。詳しくは、弁護士までご相談ください。

(3)Q 今すぐ申し立てるべきか、改正を待つべきか、迷っています。

A 成年後見人(保佐人、補助人)の選任の必要性や判断能力の状態によっても、最適な選択は異なると考えます。遺産分割等、現に対応が必要な事情がある場合には、改正法を待たずに、現行法でのご対応を含め、ご検討ください。個別の事案については、弁護士までご相談ください。

(4)Q 家族信託とは何が違うのですか。

A 家族信託は、家庭裁判所の関与がなく、当事者の意思で柔軟な財産管理等ができます。一方、本人の判断能力がなくなってからは、家族信託を利用することはできません。また、身上監護については、家族信託では対応できません。成年後見制度は、判断能力が不十分になった後に利用する制度です。家庭裁判所が関与し、成年後見人(保佐人、補助人)は、家庭裁判所が選任します。身上監護にも対応できます。制度の利用目的やご本人、ご家族の状況に応じて、どちらが適しているか、ご検討ください。 

7 お気軽に弁護士にご相談を

今回の改正は成年後見制度を柔軟で使いやすくするものであると考えますが、改正法の施行までにはまだ時間があり、その間も現行の成年後見制度が続きます。「今すぐ成年後見等の手続を進める必要があるのか」「改正法の施行を待ったほうが良いのか」「家族信託など他の選択肢の方が成年後見制度の利用よりも適しているのか」は、ご本人やご家族の状況によって異なると考えます。成年後見制度について、分からないことがありましたら、お早めに弁護士までご相談ください。