預金の使い込み(請求をされた側から)①

預金の使い込み(請求をされた側から)

 

弁護士:預金の使い込みの問題について、このコラムでは、使い込みをされたと主張されている側から考えてみましょう。
    次のような事例を仮定して考えてみましょう。
    Aさんが死亡し、その法定相続人は、長男Bさんと長女Dさんであるとします。Bさんは、Aさんと同居していました。
    Bさんは、Dさんから、Aさん名義の預金から現金が引き出されていることについて、Aさんに無断で引き出したと主張され、法定相続分相当額の返還を求められました。
 
事務員:仮に、BさんがAさんの指示にしたがって預金の引き出しなどをしていた場合、親子だと帳簿を付けたりしない場合が多いと思います。
 
弁護士:そうですね。例えば、Bさんとしては、Aさんの指示にしたがって預金を引き出し、Aさんに現金を渡していた場合などは、Aさんが何に使ったか、Bさんには、分からない場合もあると思います。
 
事務員:仮に、Bさんが、引き出した預金でAさんの生活に必要な物を買っていた場合でも、具体的に何を買ったか、はっきり覚えていない場合もあると思います。
 
弁護士:そうですね。Bさんとしては、領収書などを保管しておらず、はっきり思い出せない場合もあると思います。
 
事務員:仮に、Bさんが、Aさんから現金をもらっていたという場合、書類を作っていないことも多そうですね。
 
弁護士:そうですね。
    親子で贈与契約書を作成するケースは、あまり多くないと思います。
 
弁護士:Bさんの立場としては、Dさんから、不当利得返還請求(ふとうりとくへんかんせいきゅう)、損害賠償請求(そんがいばいしょうせいきゅう)などとして、訴訟を提起された場合、私の個人的な見解ですが、一般論として、できる限りの説明はしたほうが良いと思います。
 
事務員:このような紛争を防ぐためには、どうしたらよいですか。
 
弁護士:親子であっても、自分のお金ではないので、Bさんとしては、しっかりと書面に残すことが必要だと思います。贈与を受けたのであれば、贈与契約書を作成するなど証拠を残しておくことが必要だと思います。また、Bさんとしては、Aさんの預金の引き出しに関与し、Aさんの生活費に必要な物を買っていたときには、金銭出納簿をつけて領収証を残しておくなど、できる限り記録に残し、証拠を残しておくことが紛争の予防には大切だと思います。
    また、Aさんに判断能力が欠けているような場合には、成年後見人の選任の申し立てを検討する必要があると思います。成年後見人は、通常、収支を記録に残し、家庭裁判所に定期的に報告をします。もっとも、通常、成年後見人が金銭を相続人の一人に贈与をすることはないと思います。
 
事務員:実際に請求をされた場合には、Bさんの立場では、誠実に説明することが重要であると感じました。
    また、紛争の予防のために、たとえ親子でも、財産管理に関与する以上、しっかり記録、証拠を残すことが重要であると感じました。
 
事務員:ところで、Bさんが、Aさんの生前、Aさんの財産の全てを贈与してもらったときには、贈与契約書があれば、全てBさんが取得できるのですか。
 
弁護士:仮に、AさんとBさんの贈与が有効であるとしても、Dさんとしては、遺留分(いりゅうぶん)の主張することが考えられます。
 
事務員:遺留分?
 
弁護士:遺留分については、別の機会に説明します。
 
事務員:相続の場合、被相続人の意思で全ての財産を1人の相続人に取得させることができない場合もあるのですね。
 
弁護士:ここであげた当事者の主張や証拠は、一例です。
    当事者の主張や証拠は、個別の事案によって異なります。
    例えば、贈与契約書があったとしても、贈与が有効であることを裁判所が認めるとは限りません。また、金銭出納簿や領収証があっても、紛争を予防できるとは限りません。
    くわしくは、ご依頼される弁護士さんとよく相談してください。