相続予定だった預金を使い込まれた際の対応方法を弁護士が解説
被相続人の生前、預金が使い込まれていた場合
はじめに
被相続人の生前、被相続人と同居していた、あるいは、近くに住んでいた被相続人の子が、被相続人の預金を引き出すことはよくあることです。
また、被相続人が入院したり、施設に入所している場合に、被相続人の子が、被相続人の預貯金を管理することはよくあることです。
このような場合、被相続人の了解のもと、被相続人のために使われている場合には問題はないのですが、被相続人に無断で、もっぱら預金を引き出した被相続人の子のために使われていた場合には、法的な問題が生じます。
このような場合、被相続人の死亡後、相続人が、預金を使い込んだ相続人に対し、相続分に応じて、金銭の請求をすることが考えられます。
法律構成としては、不当利得返還請求権、あるいは、不法行為に基づく損害賠償請求権という構成をとる場合が通常だと思います。
事例
預金の使い込みをチェックする方法
金銭の返還請求
預金を使い込んだ相続人が、他の相続人の請求に応じて、使い込んだ預金を返還すれば、問題はありませんが、返還に応じない場合には、訴訟の提起を検討することになります。
被相続人の死後、預金が引き出されていた場合
はじめに
被相続人の死亡後、死亡の届け出をすれば、被相続人の預金口座は凍結され、預金が引き出せなくなることが原則です。
もっとも、被相続人の死亡後、相続人の一人が、被相続人が死亡した旨の届け出を出すことなく、キャッシュカードを用いるなどして、被相続人の預金を引き出すことがあります。
このような場合、相続人は、相続分に応じて、預金を引き出した相続人に対し、金銭の返還を請求することが考えられます。
法定相続人全員が、遺産分割の手続きのなかで解決することを合意できればよいのですが、預金を引き出した相続人が同意せず、金銭の返還もしない場合、家庭裁判所の調停手続きとは別に、訴訟の提起を検討することとなります。
相続法改正と死後の用金の引き出し
令和元年7月1日以降に被相続人が死亡し、相続が開始したケースでは、改正民法により、預金を引き出した相続人以外の相続人全員の同意があれば、被相続人の死後に引き出された預金について、遺産分割調停の手続きにおいて、その対象とすることができるようになりました。
使い込まれていた預金は取り戻せる?
はじめに
相続人の方は、被相続人の預金が引き出されている場合、これが相続人によるものであること、不当利得返還請求権、あるいは、不法行為に基づく損害賠償請求権の要件を
満たしていることを主張、立証できるか、検討することになります。
そのためには、資料を取り寄せて、分析することが必要だと思います。
金融機関の資料の取り寄せ
金融機関から、預金の取引履歴の入手、預金の払い戻しが払戻請求書でなされている場合には、預金の払戻請求書の写しの入手をします。
金融機関から預金の取引履歴を入手して、その出入金を分析します。
そのなかで、不自然な資金の流れがないか、分析します。
また、預金の払い戻しが払戻請求書でなされている場合には、預金の払戻請求書の写しを入手して、その筆跡が被相続人によるものか、分析します。
市役所や医療機関からの資料の取り寄せ
預金が引き出された当時の被相続人の判断能力に問題がある可能性がある場合には、市町村役場から、介護保険の認定調査の記録を取り寄せます。
また、被相続人が通院していた医療機関がある場合には、医療機関からカルテ等を取り寄せます。
交渉
預金を引き出した相続人に対し、金銭の返還を請求する交渉をします。
訴訟等の法的手続き
交渉しても相手方が応じない場合、訴訟等の法的手続きをします。
強制執行
判決で勝訴しても相手方が支払わない場合には、強制執行の申し立てを検討します。
当事務所でのサポート
ご相談
当事務所においては、相続に関するご相談を扱っており、被相続人の生前に預金が引き出された事案や被相続人の死亡後に預金が引き出された事案のご相談を受けております。
調査のサポート
当事務所では、預金の履歴の取り寄せの手続き等の代理を行っております。
ご本人が履歴を取り寄せる場合には、助言を行っています。
交渉、訴訟の代理
預金を引き出した相手方に対し、金銭の返還の交渉の代理、訴訟の代理などを行っています。また、強制執行の手続きも扱っています。