再転相続における相続放棄の起算点について、最高裁判所の判決がありました

事務員:相続放棄は、いつまででもできるのですか?

 

弁護士:民法上、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3箇月以内」に行うことが必要です。

 

事務員:3カ月というと、意外に短いですね。

    ところで、二次相続の場合は、どのようになるのでしょうか?

 

弁護士:令和元年8月9日、最高裁判所の判決がありました。

 

事務員:どのような事案ですか?

 

弁護士:ある程度簡略化して、説明します。

    Aさんが、死亡し、Aさんの妻と子らが相続放棄をしたことにより、Aさんの兄弟が相続人となりました。

    Aさんの兄弟のうち、Bさんは、自己がAさんの相続人となったことを知らず、Aさんの相続について、相続放棄の申述をすることなく死亡しました。

    Bさんの子であるCさんが、Bさんの死亡から3カ月以上経過した後、BさんがAさんの相続人であり、CさんがBさんからAさんの相続人としての地位を承継した事実を知りました。Cさんは、Aさんの相続人としての地位を承継した事実を知ってから3カ月以内にAさんからの相続について相続放棄の申述をし、これが受理されましたが、その相続放棄の有効性が争われた事案です。

 

事務員:何がポイントとなりましたか。

 

弁護士:このような事案を再転相続というのですが、再転相続に関し、民法916条は、民法915条の規定する相続の承認又は放棄をすべき3箇月の期間(これを「熟慮期間」といいます)は、「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算する旨を規定しています。

    この起算点がいつかが、問題となりました。

 

事務員:最高裁判所は、どのような判断をしましたか?

 

弁護士:最高裁判所は、民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきである旨判断をしました。

 

事務員:言葉遣いが難しいですね。

    ようするに、このケースではどうなのですか?

 

弁護士:Cさんが、Aさんの相続人としての地位をCさんが承継した事実を知った時が熟慮期間の起算点になります。

    このケースでは、Cさんは、Aさんの相続人としての地位をCさんが承継した事実を知ったときから3カ月以内に相続放棄の申述をしていますので、相続放棄が有効であると判断されています。

 

事務員:確かに、おじさんやおばさんと交流がないという方も少なからずいると思います。

    とりあえず、相続放棄を考えたら、早めに弁護士さんに相談した方がいいですね。