遺産分割が成立する前に、遺産である自宅に住み続けている相続人に出て行ってもらうことはできますか?
1 はじめに
被相続人が死亡し、被相続人と同居していた相続人の一人(被相続人の子)が、被相続人死亡後も自宅に居住し続けている場合、遺産分割が成立する前に出て行ってもらうことはできないのでしょうか。
また、遺産分割が成立する前に賃料を請求することは、できないでしょうか?
2 明け渡し請求
被相続人と同居していた相続人の一人(被相続人の子)に対し、他の相続人は、明け渡しを請求することができるのでしょうか。
民法898条1項は、相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する旨規定しています。
民法249条1項は、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる旨規定しています。
当該不動産の遺産分割が終了するまでの間は、明け渡しが認められることは、限られた場面になると思われます。
3 賃料請求
それでは、自宅に住んでいる相続人(被相続人の子)に対し、賃料を請求することができるのでしょうか。
最高裁判所の裁判例には、
「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。
けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。」旨判示したものがあります。
このような裁判例からすると、賃料請求が認められるとは限りません。
4 まとめ
遺産分割について、分からないことがありましたら、弁護士までご相談ください。