相続人になられた方へ

1 はじめに

ご家族の方やご親族の方が亡くなり、相続人になったときには、どのような手続をすればよいのでしょうか。

ご家族の方やご親族の方が亡くなったことで、精神的に大変なことだと思います。また、通夜、葬儀、死亡届の提出、年金等の手続きなど、多くのことに対応することも大変だと思います。

相続については、初めての経験になる方も少なくないと思います。

ここでは、相続が発生し、複数の相続人がいることを前提に、遺産分割、相続放棄、遺留分侵害額請求という民法上の法的手続という視点で、ご説明します。

この原稿は、あくまで一般論を概括的に記載したものですので、個別の事案については、弁護士までご相談ください。

2 相続人の確認

まず、被相続人の相続人の範囲を確認します。

相続人の範囲は、戸籍謄本等で確認をします。

被相続人の出生から死亡までの間の戸籍謄本(改製原戸籍謄本、除籍謄本)や相続人の戸籍類が必要になります。戸籍謄本(改製原戸籍謄本、除籍謄本)を集めるのは、手間と時間がかかることが少なくありません。

また、集めた戸籍謄本等を確認して、相続人を確認する必要があります。

相続関係が複雑な場合などには、戸籍謄本等を確認することも大変な場合が少なくありません。

3 相続財産の確認

相続財産としては、預貯金、不動産、株式、投資信託、国債、社債、自動車など、様々な種類の財産が考えられます。

被相続人の遺品を整理したり、被相続人宛ての郵便物を確認したりして、相続財産をある程度把握することができることが多いとは思いますが、それが全ての遺産とは限りません。

預貯金については、取引をしていた銀行等で、残高証明書や取引履歴を取り寄せることが多いと思います。

不動産については、市町村役場にて、名寄帳(なよせちょう)を取り寄せることが多いと思います。

株式、投資信託、国債、社債については、取引をしている金融機関(証券会社等)において、取引残高証明書を取り寄せることが多いと思います。

相続人の方としては、できる限り、相続財産について、調査をすることになると思います。

4 負債の確認

被相続人の遺品や被相続人宛ての郵便物から、被相続人の負債をある程度把握できることが多いと思います。

もっとも、後になって、被相続人の負債が判明する可能性もあります。

CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターなどの信用情報機関に被相続人の信用情報の開示を請求することも検討する必要があると思います。

負債については、後に負債が判明する可能性はありますので、相続を承認する場合には、慎重に確認する必要があると思います。

5 遺言の確認

平成元年以降に作成された公正証書遺言については、公証役場において、公正証書遺言の検索システムを利用して、公正証書遺言の有無及び保管公証役場を検索することができます。

自筆証書遺言を作成した遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用している場合、相続人の方は、遺言者の相続人の方は、遺言書の保管の有無、その内容を確認することができます。  

遺言書保管所に遺言書保管事実証明書の交付の請求をすることにより、特定の遺言者の遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを確認することができます。また、遺言書が遺言書保管所に保管されている場合、遺言書情報証明書の交付の請求をすることにより、遺言書の内容を確認することができます。

被相続人の遺品のなかから、自筆証書遺言を発見した場合には、家庭裁判所において、自筆証書遺言の検認の手続きをする必要があります。

6 遺産分割

遺言がある場合には、遺言にしたがって、遺産を相続することが通常です。

遺言がない場合、法定相続人の全員で、遺産について、どのように分割をするか、協議をすることが多いと思います。

相続人間で遺産分割の協議をしても、遺産分割の合意に達しないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停の申し立てをすることになると思います。

家庭裁判所の遺産分割の調停手続を申し立て、調停期日において、話し合いを続けても、合意に達しないときは、通常、審判の手続を行うことになります。

審判の手続においては、裁判所が遺産分割について、判断をします。

7 相続放棄

相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったことになります。

被相続人の財産よりも負債のほうが多い場合に、相続放棄をすることが多いです。

もっとも、被相続人に借金が全くない場合にも、相続放棄をすることができます。

相続放棄の手続は、相続放棄申述書を戸籍謄本等の必要書類を添えて家庭裁判所に提出する必要があります。

相続放棄の手続は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから、3か月以内に行う必要があります。

また、相続が開始した後、被相続人の財産を処分するなどの行為を行うと、相続放棄ができなくなる場合がありますので、注意が必要です。

なお、例えば、遺産を全く取得しない旨の遺産分割協議書に署名、押印し、遺産を全く取得しない場合であっても、相続放棄ではありませんので、被相続人に借金がある場合、借金を相続してしまいますので、注意が必要です。

8 遺留分侵害額請求

被相続人が遺言を残しており、その遺言が遺留分を有する相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分を有する相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

例えば、被相続人が、全ての遺産を長男に相続させるという公正証書遺言を残して死亡し、被相続人の相続人が、長男と二男の場合、二男は、長男に対し、通常、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行う必要があります。また、相続開始の時から10年を経過すると、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。

遺留分侵害額請求については、その期間制限にも注意する必要があります。

9 まとめ

相続については、調査をしたり、検討したりする事項が多岐にわたることが少なくありません。

また、遺言、遺産分割、相続放棄など、相続人としても、調査の結果に応じて、様々な手続のなかから、適切な手続きを選択することが必要になります。

相続においては、相続税の申告が必要になる場合もあります。相続税の申告については、当事務所では、税理士の先生をご紹介させていただいております。

また、相続の手続においては、登記が必要になる場合もあります。登記の手続については、当事務所では、司法書士の先生をご紹介させていただいております。

相続について、分からないことがございましたら、弁護士までご相談ください。