遺留分の問題について

遺留分の問題について

しかし、「3人の子どものうち1人の子どもに全財産を譲りたい」「愛人に全財産を譲りたい」という内容の遺言をした場合や亡くなる直前に3人の子どものうち1人に全財産を贈与した場合などには、残された家族は生活に困ってしまうことがあります。

 

被相続人(お亡くなりになられた方)は、原則として、生前、遺言によって自身の財産をどのように相続させるかを自由に決めておくことができます。
また、被相続人は、生前、贈与により自由に自己の財産を処分することができます。 

 

このような事態を避けるために、民法では一定の相続人に対し、一定の割合の相続財産を承継することを認めています。これが遺留分になります。

特定の相続人が受けた相続財産が遺留分にみたないときには、遺留分が侵害されていることになります。もっとも、遺留分を侵害する遺言・贈与も当然に無効になるわけではありません。

侵害された遺留分は、何もしなくとも当然にもらえるものではなく、請求をしなければ受け取ることができません。この遺留分を受け取るための請求を遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。

遺留分減殺請求を行なうことができるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。具体的には、被相続人の配偶者、子及びその代襲者、直系尊属(父母、祖父母など)です。兄弟姉妹及びその代襲相続人は、遺留分減殺請求を行うことができません。

そのため、遺言の中で全ての財産を第三者に遺贈する旨の文書が記載されていた場合には、兄弟や姉妹は相続財産を受けとる権利が一切なくなります。遺留分減殺請求は、他の相続人に対する遺贈・贈与だけでなく、相続人でない第三者に対する遺贈、贈与に対しても可能です。

なお、遺留分の割合は法律によって定められています。

具体的には、例えば、法定相続人が配偶者と2人の子である場合、配偶者の遺留分は1/4、2人の子の遺留分はそれぞれ1/8です。

法定相続人が配偶者と父母の場合、配偶者の遺留分は1/3、父母の遺留分はそれぞれ1/12です。法定相続人が父母のみの場合、遺留分はそれぞれ1/6です。

遺留分減殺請求については、権利を行使できる期間が「遺留分権利者が相続の開始または減殺の対象となる贈与又は遺贈があったことを知った時から1年」と法律に規定されており、注意が必要です。相続開始の時から10年経過したときも権利行使できなくなります。

遺留分が問題になる場合には、相続人間でのトラブルが多いので、まずは相続の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

※遺留分減殺請求権は民法改正により、遺留分侵害額請求権となりました。詳しくは弁護士にご相談ください。